まえがき
――背景――
国や自治体の環境白書をみるまでもなく、都市の道路周辺における道路交通騒音の状態は一向に改善される気配がなく、特に一般道路周辺地域に対する騒音対策はほとんどなおざりにされてきた。
道路交通騒音の防止策としては、車両の低騒音化や道路舗装面などの改善がなされてきたが効果的な改善をみるに至っていない。
高速道路などにみられる遮音塀など騒音の伝搬中の減衰を利用した対策は一般道路には適用できない。
市街地の道路における騒音悪化の1つの要因として、中高層建築などによる反射音の影響がある。
――目的――
道路周辺部における騒音に、建物による反射音がどれほど寄与しているか、すなわち、建物外壁を吸音した場合にどれほどの騒音低減効果が期待できるか、簡単なコンピュータ・シミュレーションを用いて検討し、建物外壁を吸音することによる騒音防止対策は効果的な騒音対策として成り立つのかということを明らかにする。
シミュレーション対象市街地
対象市街地:福岡市内の3ヶ所。(大博通り、昭和通り、明治通り)
・道路条件:表1
・建物の立面図を作成
・ 吸音率表を作成 (高さ1mごと:壁面の吸音率=0.01,建物のない部分の吸音率=1.0)
表1対象市街地
計算モデル
1. Model-1 (拡散音場モデル) 図-1参照
道路、周辺の建物、道路上空で囲まれた空間を完全拡散音場と仮定したモデル
このモデルで予測される騒音レベルは道路周辺の建物などの影響を最大限に見積もった結果を与えると考えられる。
2. Model-2 (虚像法モデル)
計算手順:音源から発生した音響エネルギーを道路両側の建物外壁面で反射させ、音源に到達した音響エネルギーを騒音レベルに変換(図-2断面図参照)
モデル化
・車両
・無指向性点音源
・PWLは等しい
・等速自由走行→車頭間隔は指数分布
・各車線の交通量は等しい
・道路
・無限長直線
・完全反射面
・建物
・道路を挟んで平行な鉛直面
・高さ30mまでの外壁の吸音率→実際の建物立面を基に高さ1mごとの平均吸音率を算出
計算条件
・計算に用いる計算台数
道路が有限長であるときと無限長であるときの差が0.05dBA以下⇒受音点から車線までの距離=dに関係(図-2平面図参照)
・反射回数
騒音レベルの値は収束⇒最大15回
・平均化個数(計算回数)
平均値の誤差0.1dBA以下かつ平均値の標準偏差0.05dBA程度⇒50回
建物外壁の吸音による騒音低減効果
1. Model-1による推定結果 (図-3参照)
図-3騒音減衰効果(大博通り 吸音率=0.2)
2. Model-2による推定結果 (図-4参照)
図-4騒音減衰効果(大博通り 吸音率=0.2)
3. まとめ (図-5参照)
図-5騒音減衰効果(大博通り 道路端から5.25m,高さ1mの地点)
むすび
結論
2つの計算さんモデルを用いて検討してみた結果、4〜8車線の道路を対象とした計算結果では、建物外壁の吸音率を0.1、0.2、0.3にした時の騒音低減効果はそれぞれおよそ0.2、0.5、0.7 dBA程度であると推定された。
この結果をみる限りでは決して効果的な騒音防止対策とはいえない。
今回行ったシミュレーションは、道路や建物で囲まれた空間を音響的に極めて単純化、理想化して取り扱っているので、シミュレーション結果の妥当性を検討するには、模型実験を行って騒音減衰効果を測定したりする必要がある。
今回は、簡単のため、建物外壁が道路と平行な鉛直面である場合だけを取り扱ったが、建物による反射音の影響は、建物外壁が傾斜面であったり、道路に対して斜めに配置された建物の場合や、建物と道路の間に植樹帯などの吸音効果が見込まれる施設が設置された場合などの効果についても検討してみる必要がある。
提言
反射音に対する防音効果は自ずから限界があるので、道路交通騒音の防音対策としては、低騒音型エンジン、低騒音型タイヤ、低騒音型の道路舗装など音源を対象とした騒音対策の開発がこれからも必要である。
いずれにしても、一般道路周辺部における道路交通騒音に対しては効果的な騒音対策がないことから、今後は、上述のような対症療法的騒音対策にとどまらず、騒音に配慮した都市計画、地域計画などの根本的な騒音対策に取り組んでいく必要がある。