1996年度 卒業論文
大学間相互利用が可能な建築音響に関するマルチメディア教育システムの開発
九州大学工学部建築学科 白川秀樹
1. はじめに
1.1 研究の背景
学生の教育は大学に課せられた大きな責務の一つであるが、近年、教官数の減少や研究分野の細分化の進展に伴って、最新の研究成果を取り入れたきめ細かい講義や演習を行うことは難しくなってきている。このような問題に対する対応策として、次のようなことが構想される。まず、教育に関する大学間相互協力体制を築くことが考えられる。多数の学生を対象にきめ細かな教育を行うには、同様の講義を複数の教官が分担することにより、各教官の専門分野における経験と実績を基に質の高い授業内容にすることが期待できる。次に、情報ネットワークを利用した新しい授業形態の導入があげられる。すなわち、学生がコンピュータと会話しながら自発的に学ぶことのできる教育システムを構築することである。このようなシステムには、音と映像の利用(マルチメディア)が不可欠である。特に「建築音響」を学ぶためには、実際に音を聞きながら学習することは、大きな教育効果が期待できよう。
1.2 研究目的
このような背景を基に、本研究では、インターネットに接続されたコンピュータからアクセス可能な「建築音響に関するマルチメディア教育システム」を開発した。
2. 教育システムの基本方針
教育システムの設計にあたっては、次のような基本方針を設定した。
2.1 インターネットの利用
インターネットを利用することにより、大学間の物理的距離の壁を取り除き、どの大学に所属する学生も同一条件の教育を受けることが可能なシステムとする。具体的には次のような機能を利用する。
(1)WWW ハイパーテキスト型の情報提供検索システム
(2)E-mail コンピュータの通信機能を利用して、テキストデータを宛先を指定して、送ったり受け取ったりするシステム
(3)ftp ネットワークに接続されたコンピュータ間でファイルを転送するシステム
2.2マルチメディアデータベースの構築
近年、コンピュータ技術の向上によって、音声や画像データの取り扱いが容易になりつつある。このような技術を活用して、マルチメディア対応の教育システムを提供する。
2.3 学生の自主的学習
会話型の実現により、学生が自分のペースで、自主的に学習できる教育環境を提供する。
3. 教育システムの構成
本研究メンバーは、建築音響を専門とする研究者からなる。教育システムを各メンバーの専門領域に分けて、分担して教育プログラムを作成し、全体の構成を考えた上で運用する。図-1に建築音響プログラムのスタートページを示す。
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| 図-1 建築音響プログラムスタートページ
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3.1 マルチメディアの活用
従来、建築音響を学習する際、教科書等からでは静的な限られた情報しか得られず、その理解には相当の努力を強いられてきたものと想像される。そこで、本システムでは文章、画像、音声等の複数の表現手段を用い、教育効果の向上を目指した。
特に、言葉だけでは理解の難しい音響現象や聴覚的な効果を、実際に音を聞きながら、学習することは、教育的効果が大きいと考える。
3.2 検索
専門用語や学習している内容に関連した項目を検索する機能を設けた。これにより、学生はわからない用語や内容に遭遇したとき、容易にそれを解決できる。
3.3 データベース
コンピュータの得意とするデータベース機能を利用し、以下のデータベースを構築した。情報をデジタル化することで瞬時の検索が可能である。
・音響空間データベース
音響空間の実例を見ることは、建築音響を学習する上で大変重要である。そこで、コンサートホールや劇場空間などの建築空間のデータベースを構築した。写真、諸元、音響データの閲覧ができる。
・音響材料データベース
吸音材料と遮音材料の二つのデータベースで構成されている。音響材料の諸データの閲覧、検索およびそれらのデータを用いたシミュレーションを行える。
3.4 演習
学習効果を高めるためには演習も重要である。本教育システムでも、学生の理解を高めるために随所に演習問題を設けた。
4. 今後の課題
4.1 教育効果の評価
今後、学生に試用させて、システムの効果や問題点を明らかにする。
4.2 データの追加
現時点では、本教育システムに導入しているデータ数は不十分である。今後は、各データ数を増大させたり、演習問題を追加して、実用的なシステムを目指す。
4.3 通信速度
コンピュータ上の画像や音声のデータ量は膨大でとなる。そのため、本システムの運用の際に通信速度が問題となることが懸念される。
5. まとめ
本研究では大学間相互利用が可能なマルチメディア教育システムの開発を行った。インターネットの利用により「大学間相互協力体制」を築き、マルチメディアの利用により、建築音響を、理論的、感覚的、そして統合的に理解できるようにした。今後、本教育システムに有効な新しい技術を導入しながら、システムの改良を行っていきたいと考える。
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