1996年度卒業論文
商業空間の印象におけるBGMの影響
九州大学工学部建築学科 上野亮子 藤原靖久
1. 研究の目的
都市の公共空間、特に商業空間の音環境はどのようになっているであろうか。
商業空間では、空間のイメージ改善などの目的でBGMがよく使用されている。
しかし、BGMの音量が大きすぎていたり、複数のBGMが混ざり合って聞こえていたりなど、
かえってその場の音環境を悪くしていることも十分考えられる。
そこで、今回の研究では、BGMの状態により空間の印象がどのように変わるかを調べてみた。
・ 平日の商業空間において、BGMの状態と空間の印象の関係にどのような傾向が見られるか。
・ 音環境に変化の見られる休日では、平日と比べどのような傾向が見られるか。
2. 調査
・ 本調査を行う前に予備調査として、天神地下街のBGMと音環境の現状を調査した。
この結果、全体のBGMや近くの店舗からのBGMが重なり合っていることがわかった。
・ 第1調査は1996年11月20日(水)〜29日(金)の平日13:00〜17:00に行った。
調査者は9名の学生である。調査地域は博多駅地下街・天神地下街・上川端商店街の3カ所で、
各地域に4カ所の測定点があり、合計12カ所の調査地点で行った。
(a)音の聞き取り調査
どのような音が聞こえ、それがどの程度の大きさとして感じられているかを把握するもので、
調査者が各調査点で5分間の聞き取りを行い、聞こえてきた音を列挙し、
それぞれの音の大きさ、意識の程度を主観的に9段階で評価した。
(b)空間の印象調査
空間に関する総合的な評価を得るため、空間の印象について、
7段階の尺度をもつ22の形容詞対で構成されるSD法評定を行った。
・ 第2調査は、1997年2月1日(土)・2日(日)の13:00〜17:00に行った。
調査者は第1調査と同じく9名の学生であり、調査点も第1調査と同じ12カ所の調査点で行った。
(a)音の聞き取り調査
(b)空間の印象調査
を行い、さらに次の調査を行った。
(c)空間の要素に関する質問
空間の印象はどのような要素に影響を受けているのかを把握するために、直接的な質問を行った。
3. 結果と考察
3.1 第1調査
・BGMの指標
1)錯綜数:聞こえてくるBGMの数
2)BGM支配率: BGMの占める割合
○博多地下街、天神3、4で大きく、川端商店街、天神1、2で小さい。
○第1調査のときより、第2調査は減少
・空間の印象( SD法)
1) 第1因子: 変化に富む、特色ある、心弾む、華やかな、等⇒活動性
2) 第2因子: ゆったりした、やすらぐ、和んだ、穏やかな、等⇒快適性
3) 第3因子: すっきりした、品のある、澄んだ、統一された、等⇒統一性
・ 天神地下街は活動性が高く、快適性が低い。統一性も高い。
・ 川端商店街は活動性が低く、快適性が高い。
・ 第1調査のときに比べて、第2調査は活動性が高くなり、快適性が低くなった。

各因子とBGM支配率・錯綜数の関係
3.2 第2調査
・ 第1調査と同じSD法の3因子とBGM支配率、錯綜数との関係では、変化や第2調査での傾向は見られなかった。
・ その原因を探るため、数量化T類を行い、第2調査で行った質問の要素とSD法の因子との関係を調べた。
第1因子「活動性」には“人の多さ”が最も影響が大きく、
「活動性」の変化も人が特に多くなったと感じられた天神地下街で大きい。
第2因子「快適性」には“騒がしさ”の影響が最も大きいが、“広さ”“BGMの混じり方”の影響も大きく、“騒がしさ”によって、
得点の高い低いはある程度説明ができるが、変化は説明ができない。
第3因子「統一性」には“雰囲気”が最も影響が大きく、次に“BGMの曲調”“空気”が影響が大きい。
“雰囲気”は総合的な評価であるがこれとの相関では“BGMのふさわしさ”が高く、
「統一性」にはBGMとの影響が大きいと言える。しかし、これについては“雰囲気”や
“BGMのふさわしさ・曲調”、“空気”などの抽象的な評価が多く、
変化や得点の説明をすることが難しい。
4. まとめ
・ BGMの重なる数、音環境に占める割合は、空間の活動性、快適性、統一性に影響する傾向が見られる。
・ 他の音(本論文では、人による音)が強くなると、BGMと空間の印象の相関関係はみられなくなる。
・ 空間の印象には、BGMを始めとする音環境だけでなく、視覚的要素なども含まれるため、
BGMだけでは説明ができないが、BGMの影響は大きいことがわかった。
・ 今後の研究では、調査方法・調査地の改善、他の音を主な対象にすることなどが必要である。
<おまけ> 発表風景

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