1996年度の研究テーマ

  1. 住宅地の地域計画的騒音防止対策に関する研究

    アメニティ豊かな居住環境のためには、住宅地は静かでなければならない。これまでの住宅地の計画は、必ずしも騒音を配慮した計画がなされてきたとはいえない。本研究は、現在建設中の福岡市外環状線道路周辺の新しい住宅地を対象に、開発の進展に伴って住宅地内の環境騒音がどのように変化してゆくかを調査するとともに、音響模型実験によって道路交通騒音の住宅地内への伝搬の性状を捉え、住宅地の中高層建築物やオープンスペースなどの都市施設と環境騒音の関連性を明らかにし、これを基に住宅地内の環境騒音を最小化するための住宅地の地域計画的指針を提示する。

  2. オーディトリウムにおけるバルコニーの音響設計法に関する研究

    オーディトリウムのバルコニー下は、“音がこもる”“窓を通して聞いているような感じがする”というように、定性的には“好ましくない”音場であるといわれている。しかしながら、バルコニーの形態(高さや奥行き)に関する音響設計指針はない。藤本研究室では、これまでバルコニー下部の音響特性と聴感印象との関連について研究し、バルコニーの奥行きを高さの0.7〜1.0倍程度にすれば、バルコニー下部でも“音の好ましさ”が損なわれないという一応の結論に達している。本年度はこの結果を再検証する。すなわち、(1)模擬音場を用いた音響心理実験によって「音に包まれた感じ」の弁別閾を求め、(2)コンピュータシミュレーションによって、バルコニー形態をいろいろ変化させた場合のバルコニー下部における初期反射音特性を求め、バルコニー形態と初期反射音特性の関連を明らかにし、(3)両者から、バルコニーの音響設計指針を提示する。

  3. インターネットを利用した建築音響に関するマルチメディア教育システムの開発

    建築音響の学習には音と映像が不可欠である。それには、現在話題になっているインターネットを利用することが有効であろうという考えから、現在、九州大学・藤本研究室を中心に、鹿児島大学、熊本大学、大分大学、久留米工業大学、九州共立大学の建築音響を専門とする先生方とチームを組んで、「インターネットを利用した建築音響に関するマルチメディア教育システムの開発」を行っている。昨年度は、藤本研究室にサーバを設置し、その他の大学のパソコンからインターネットを介してアクセスできる環境を構築するとともに、目標とする教育プログラムの基本設計を行った。藤本研究室は、主として教育システムの全体的な計画を担当し、その他の大学は建築音響に関するそれぞれの専門別の教育プログラムの作成を担当する。作成したプログラムは藤本研究室のサーバ一において、各大学から利用できるようにする。本年度の目標は、教育プログラムの中身の作成であり、藤本研究室は、各大学で行う作業をサポートするプログラムを作成する。

  4. 福岡市の環境騒音の経年変化に関する研究

    都市環境の保全を目的として、環境に関する様々な環境基準が設定されており、騒音に関しも、時間別、用途地域別の環境基準が設定されている。また環境庁により、環境騒音を把握のための「環境騒音把握手法」も設定されている。藤本研究室では、福岡市からの委託を受けて平成5年度に環境騒音の実測調査を行ったが、この結果は「第2次福岡市環境プラン」の策定に用いられている。福岡市は、現在、都市開発が急速に進展しており、環境騒音の変化も著しいと予想される。そこで、本年度、環境騒音を再調査して、3年間の環境騒音の変化を捉え、都市の変化との関連性について研究する。これを基に、福岡市の環境基準設定のための地域指定の見直しに関する指針を提言する。なお、本研究は春田研究室(久留米工業大学)、古屋研究室(九州共立大学)との共同研究である。

  5. サウンドスケープの視点からみた都市の音施設に関する研究

    サウンドスケープとはカナダの作曲家マリー・シェーファーの造語であり、一般には「音の風景」と訳されている。シェーファーは、環境に存在するすべての音を受け止め、好ましい音環境を創造するにはどうすべきかを考える必要があると提言している。近年、都市の公共空間には、仕掛け時計などのような“音を出す施設”が種々設けられるような傾向にある。環境に存在する音に関心が持たれるようになりつつあることは好ましいことであり、音を環境デザインの道具として用いること自体を否定するものではないが、空間に潤いをもたらすことを意図した音施設も、時として騒音となる危険性を内包している。本研究は、都市の公共空間に設置される音施設を調査し、公共空間の音環境のあり方を提言することを目的とする。昨年度は、駅の音環境について調査研究を行ったが、本年度は対象を公園などに広げて研究を進める。


藤本研究室ホームページへ