交通量の多い道路に面した住宅地では、計画段階から道路交通騒音に配慮する必要があるが、そのためには道路から伝搬する騒音を予測して騒音対策を検討しなければならない。戸建て住宅団地のような複数の建物が複雑に配置された地域では、道路から伝搬する騒音の住宅による回折減衰を把えなけれならないが、これは従来の音響理論では極めて難しい。また住宅地の計画段階において騒音予測を行うには、予測精度が多少悪くても簡単に予測できることが重要である。そこで、本研究は音響模型実験により道路交通騒音の戸建て住宅地内への伝搬性状を把握し、簡便な騒音予測法を確立しようとするものである。模型実験は、建築学科の無響室に戸建て住宅地の模型を設置し、道路交通騒音を模擬した音を発生して住宅地内の騒音レベルを計測し、建物の配置条件との関係を統計的に捉え、騒音減衰の予測法を得ようというものである。模型実験で得られた予測手法の妥当性を検証するために、実際の道路周辺に立地した戸建て住宅地において騒音の実測調査を行う。
この研究は1.に続くもので、交通量の多い道路に面した地域に、住宅団地を計画する場合に、緩衝建築物やオープンスペースなどをどのように配置すれば住宅への騒音を最小にできるかについて検討し、騒音の影響を考えた建物などの配置計画の指針を提示しようとするものである。具体的には、1.の研究から得られる住宅などによる騒音の減衰性状を基に、緩衝建物やオープンスペースの配置をさまざまに変化させたときの住宅内への道路交通騒音をコンピュータ・シミュレーションによって求め、建物などの配置と騒音レベルの関係を検討する。
サウンドスケープとはカナダの作曲家マリー・シェーファーの造語であり、一般には「音の風景」と訳されている。シェーファーは、環境に存在するすべての音を受け止め、好ましい音環境を創造するにはどうすべきかを考える必要があると提言している。近年、都市の公共空間には、仕掛け時計などのような"音を出す施設"が種々設けられるような傾向にある。環境に存在する音に関心が持たれるようになりつつあることは好ましいことであり、音を環境デザインの道具として用いること自体を否定するものではないが、空間に潤いをもたらすことを意図した音施設も、時として騒音となる危険性を内包している。本研究は、都市の公共空間に設置されるさまざまな音施設を調査し、公共空間の音環境のあり方を提言することを目的とする。これまで、駅の音環境、商業空間のBGMについて調査研究を行ってきたが、本年度は対象を公園などに広げて研究を進める。
オーディトリウムのバルコニー下は、"音がこもる""窓を通して聞いているような感じがする"というように、定性的には"好ましくない"音場であるといわれている。しかしながら、バルコニーの形態(高さや奥行き)に関する音響設計指針はない。当研究室では、これまでバルコニー下部の音響特性と聴感印象との関連について研究し、バルコニーの奥行きを高さの0.7〜1.0倍程度にすれば、バルコニー下部でも音の好ましさが損なわれないという結論を得ている。しかしながら、バルコニー下の音場の特徴は初期反射音だけでは捉えられない。例えば、音響エネルギーや残響の不足などが予想される。そこで本研究は、残響音の不足や方向性の聴覚的効果について研究し、バルコニー下の音が悪い原因をさらに追求する。
建築音響の学習には音を聴くことは有意義である。それには、インターネットを利用することが有効であろうという考えから、平成7〜9年度で九州大学・藤本研究室を中心に、鹿児島大学、熊本大学、大分大学、久留米工業大学、九州共立大学の建築音響を専門とする先生とチームを組んで、「インターネットを利用した建築音響に関するマルチメディア教育システムの開発」を行った。現在、その第一バージョンが藤本研究室のサーバ上で稼働している。本年度から、この教育データベースをさらに改善するための国際研究を計画中である。今回の卒業論文では、このプロジェクトの支援を担当しながら、現在稼働中の教育システムの問題点の洗い出しと、改善のための基本設計などを目的とする。なお、プロジェクトチームは、アメリカ、オーストラリア、ベルギー、スウェーデンの音響研究者が参加する予定である。